あなたの人生の物語(と,SFというジャンルについて分かったこと)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

初めて買ったSF小説なんだが,貸したりしてるうちに無くしてしまっていた.お勧めなのでまた人に貸したりしたいし,自分でもたまに読み直したいなと思ったので買い直した.


久々にちょっと読んでみたが,読みやすい…のは,多分グレッグ・イーガンを読んだばっかりだからだと思う(笑).あれは私には難しいよ….

SFについて分かったこと

私は基本的に本を全然読まない人なので,小説というくくりでみても数えるほどしか読んだ記憶が無い.なのでこれが特別優れているかどうかの判断は全然自信ない.SFというくくりで読んだのは,

の4冊だと思う.SFと聞いてみんながどんなのを思い浮かべるのか分からないが,私が読んだものの中には宇宙空間でドンパチやるのは一つも無かった(笑).だけど,結構それぞれ性質が違うなーとは思った.


どうもSFというのは色々ジャンル分けされていて,単純に「異世界(場所だったり時間だったりが今と異なる)とその原理」を延々と説明する(が目的)のが「ハードSF」と呼ばれて,宇宙を舞台にした冒険は「スペースオペラ」と言うらしい.

上記四冊を読んでみて分かったのは,どうもハードSFというジャンルは,物語としての面白さにはそれ程こだわりがなく,「今と違う世界をどれだけリアリティを持って想像して書きだせたか」という事に心血を注いでいるらしい,ということだ.その事を一番感じたのは,2001年宇宙の旅だった.言わずと知れた(未見だけど)有名映画の原作(製作は同時進行しており,映画の方が先に世に出たそうだが)なのだが,もうこれは物凄い淡々とした小説だ(笑).ただ,未来にあるはずの物を膨大に予測していて,そのリアリティを楽しむためのもののようなのだった(タッチデバイスでニュースを見るのなんて,まさに現代だな).タイトルからして「宇宙の旅」だし「宇宙人との接触」とかもあるし,要素だけ見るとこの四冊の中では一番スペースオペラっぽいのだが,一番それとは離れている感じだった.


SFの中心(コア)はやはりハードSFであり,SFにSF以外の要素を足したものがその他のSFのジャンルであるようなのだ.「泣けるお話を探してる」みたいな人は純ハードSFは全く面白くないと思う.人間関係とかはここでは主題では無いようなのだ.


で.これら四冊はどれも世間の分類上ではハードSFとなっているようだけど,それでもSFの純度は結構違う.「2001年宇宙の旅」と「順列都市」はかなり純度の高いSFで,「あなたの人生の物語」はそれに比べると若干物語性を重視していて,「われはロボット」はさらに物語としての色合いが強く,しかもミステリの要素を含んでいるようだ.


私は物語性がある方が好きかなーということで「あなたの人生の物語」や「われはロボット」が特に楽しかった.でも人にSFを勧める,となると,われはロボットはちょっとミステリ的に面白過ぎて誤解されそうなので,あなたの人生の物語を貸すかな,と,まあそんな話でした.

この本について

まあそれはそれとして.この本は一つ一つは別のお話の短編集で,どれもロボットも宇宙も電脳空間も出てこない(宇宙人は出てくる).一個目の「バビロンの塔」なんかは純度が高過ぎて読みにくくもあるので,順番を気にせず読んでも良いかも.


特にファンタジーっぽい「七十二文字」が好きで,これは(大学の)みんなにもオススメ出来ると思う.内容をばらさずに上手く説明できないけど….ゴーレムとホムンクルスが居るのが前提の世界での科学の話.生物系の人に是非読んでもらって感想を聞きたい.