新型コロナウイルスに関する基礎事項の解説(ウイルスの名称と緊急事態宣言)

新型コロナウイルスについて、普通にニュース見てたら分からなかったけど、調べたら「そうだったのか」と驚いて「それぐらいちゃんと説明しといてくれよ」と思ったことを紹介しておきます。

 

 

1.「新型コロナウイルス」と「COVID-19」という言葉の関係

この二つは、一般には相互に言い換え可能のように使われていますが、別物です。

 

先に答えを言ってしまうと、こうです。

 

 

これは

 

 

という関係と同じと言えば分かりやすいでしょうか。

 

私は最初、「新型コロナウイルス」という名前だと、次のコロナウイルスが出てきたら別の名前を付けなきゃいけないから、ウイルスに固有名を付ける必要があって、それがCOVID-19なのかな?と思っていたのですが、調べたら違いました。そもそもCOVID-19というのは何の略かと言うと、

 

 

でした。感染症つまり病気の名前なんですね。なおdiseaseは、一般的には疾病や疾患といった訳があてられますが、それは「感染症などの、原因が明確な、体内の異常に由来する病気」といったような意味です。このケースでは明確に感染症なので感染症と訳されているようです。では、ウイルス自体の固有名はないのか?と思って調べたところ、それは

 

 

という名前でした。これを見てようやく分かったのですが、新型コロナウイルスは以前騒動になったSARSの2だったんですね。そして前回のSARSもウイルス名ではなく病名で、その病原体はコロナウイルスの一種だったんですね。ただし、ウイルスの命名自体が病名に由来しているという順番なので、SARSと言ってウイルス名を指すのでもほとんど間違いにはならなそうです。厳密にウイルスを指すなら「SARSウイルス」とか言うべきだったのでしょう。

 

 

この件についての解説は以上ですが、少し議論を深めると、「病原体→病気」の部分って「病原体+人→病気」って書いた方が正確かなと思うんですね。似たような話として、

 

  • "Disasters occur when hazards meet vulnerability."
  • 「災害は、危機が脆弱性に出会うことで起きる」

 

という言葉があります。例えば地震そのものはhazardで、地震によって起こる被害がdisasterという関係です。ここで、日本はhazardもdisasterも同じ「災害」と呼んでしまうので、それを分離する意識が低い、というような議論を聞いたとがあって、本当かは分かりませんが面白い指摘だなと思いました。

 

そうした話に関連して、最近は「免疫力」とはなんぞや、という所が気になって考えている話があるので、それを次の記事で書きたいと思っています。

 

2.地方自治体(北海道など)が出した緊急事態宣言と、国が出す緊急事態宣言の違い

これも、実は完全なる別物です。実は、地方自治体が出す緊急事態宣言には、法的な効力は全くありません。単なる言葉です。

 

国が出す方の緊急事態宣言はなんなんのかと言うと、なんらかのマズい事態において、それに対応する「特別法」を発動する時に慣例的に使われる言葉です。「緊急事態宣言」という文言に特別な意味があるわけではなく、「非常事態宣言」などと言っても特に違いがあるわけではないようです。

 

では今回発動される(された)「特別法」はなんなのかというと、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」というものです。「等」と付けておくことで、感染症に広く使えるようにしているのですね。

 

 

ここの「第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置」のタイトルが「(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)」となっていますね。緊急事態宣言を出すということは、ここに書かれていることをやるということになります。ここでは一応「緊急事態宣言」という言葉が使われているので、「非常事態宣言」ではなく「緊急事態宣言」で告知されているのだと思われます。具体的な内容については、今さらですし、ここでは割愛します。

 

改めてまとめるとこういう関係になります。

 

  • 国が出す緊急事態宣言:特別法の発動(法的根拠あり)
  • 地方自治体が出す緊急事態宣言:単なる言葉、スローガン(法的根拠なし)

 

私の感覚では、こんなに違うものを同じ名前で使う無神経さが信じられません。ニュースを見ていても、「北海道は緊急事態宣言を出したのに、東京都は出さないのか」などと責められたりしていたと記憶しているのですが、言っている人達はそもそも何の効力もないものであることを理解していたのでしょうか。

 

一歩踏み込んで考えてみると、こうした無神経さの裏には、「行政は法的根拠のある活動しかできない」という原則(「法律による行政の原理」)を理解していない人が多いという実態があるのではないでしょうか。これは、義務教育の中でも最優先で理解しておかなくてはならないことに感じます。(私も大学生の途中まで理解していませんでしたが)

 

今回の騒動では、日本は他国のような強制力を持って国民の活動を縛れないことに私も改めて気付かされました。人権にうるさいと思われる西洋よりもさらに厳しかったのですね。これは日本が敗戦の際に、それまでの反省から行政の暴走を防ぐために大きな縛りを与えたからでしょう。法律のことを教える教科は公民だと思いますが、法律は歴史があって定まっていくのですから、是非とも二つの教科を連動させて教えて欲しいものです。

 

私も、義務教育をする立場ではありませんが、こうした話は折に触れて学生に解説していこうと思います。身の回りで起きたことを題材にしたら、理解もし易いでしょうしね。