Twitterはどんなサービスか(その1)

先日こんな話が盛り上がった。

見れば分かるように、私も議論に参加した。その事について。

ツイッターにおけるコピペ

リンク先の話は「ツイッターでのネタのコピペは是か非か」という事についての議論である。


単純にWebの一般的なルールとしては「引用は出典を示す」で良いと思う。広域なWebと違って、ローカルなツイッターにはリツイートという機能「も」あるのだからリツイートを「使っても」良い。少なくともそのどちらかをしていれば、法的には批判の対象にはならないはずだ。そのどちらの方が望ましいかということは、Webの一般的なルールとしては決まらない*1ツイッター内で閉じた話だ。


これだけ見ると単純な話のようだが、実はそう単純でもない。その事についてまず説明していく。このTogetterがまとめられた経緯、意義についてだ。

ツイッターはどれぐらい「緩く」あるべきか

まず、上記のように、一般的にはWeb上での引用には出典がいる。しかし、今回議題に挙がったのはまさにその前提の部分だ。「ツイッターでネタをコピペするのは可か」ということが議論になっている。なぜそんな当たり前の事を今一度議論しなくちゃいけないのだろうと思うのが自然なのかもしれない。実際「リツイートしろ」や「出典示せ」とだけ言う人も結構いる。それが当たり前だろと言うように。


しかし、私含むある程度の割合の人は、そこが議論の対象である(議論の余地がある…私は「確認の必要がある」だが)と感じた。それはなぜかというと、コピペが許されるケースのネットの文化もあるという事を身近に感じていたからだ。それはすなわち、2chに代表される匿名掲示板の文化である。



2chでコピペが許される理由

2chは基本的に匿名文化である。もちろん、ハンドルネームを利用する事はあるが、それは「誰の発言か(議論の経過)」を明確にするための物であり、発言者の権利*2を明確にするためではない(そういうケースも無くはないが非常に稀)。


そういう環境においては、その中での発言について、誰の発言であるかというのは重視されなくなる。その書き込みによって非難される人も称賛される人も特定されないからだ。それゆえ「ネタを勝手にコピペ」することが許される。もう少し言うと、「ネタは2chのみんなで生み出したもの」という意識もあると考えられる。2chにおける面白さは、一人の書き込みではなく人同士のやり取りの中に生まれる事が多いからだ。


もちろんそんな2chでも「○板で見つけてきた」といった風に律儀に出典を示している人はいるし、Webのマナー的にはそうした方がいいと言うべきなのかもしれない。でも、我々は漠然と「とやかく言わない事の豊かさ」というものがある事を知っている。特に誰も損しないなら、出典等を示すコストを減らしたいという気持ちは理解できる。だからこそ「示さなくても良いなら示さない」という人がたくさん居るのだと思う。


mixiでもコピペは許されるが…2chとは違う意味である

話を分かりやすくするために、2chの対比としてmixiについて考える。mixiは、その登録に携帯メールアドレスが必要であることからも分かるように、ネットのサービスとしては極めて匿名性の低いコミュニティである。ここでいう匿名性が低いというのは、実名であるかどうかではなく、mixi内での存在としての誰の発言かということが明確であるということだ。


mixiは、オフラインのローカルなコミュニティと地続きである事を売りにしたコミュニティだ。そもそも閲覧に認証も必要だ。それゆえ、ほとんどオフラインで話すときのように、勝手な引用が許される。しかしこれは2chでコピペが許される理由とはかなり違う。それは引用だという事が必ず伝わるという意味で許されるのであって、そうでなければ全く許されていないと見る事が出来る。そもそもmixiにコピペネタを貼ろうという人はほとんど居ないだろう。もしコピペしたとしても、それを見る人はオフラインでも交流のある人なのだから、それがコピペ(引用)である事は、普段のその人を知ってれば自然と伝わる。また、「コピペで称賛を受けている」という事を確認する機会が無いから問題にならないというのもある。



普通のWebサイトやブログでは無断引用は許されない

これはちょっと余談になるかもしれないが、無断引用を許されるケースばっかり説明したので、許されないケースについて。「普通のWebサイトやブログでは無断引用は許されない」これはみんな異論はないと思う。しかしWebサイトやブログを持っている人に比べて、mixi2chに書き込んだ事のある人は非常に多い。そして、そのどちらもコピペというものについて「適当にやってりゃなんとかなる」状態だっというのも、今回の議論に繋がってるかもしれない。つまり多くの人は意外にコピペについて無頓着なのだ。



twitterでのコピペの是非

さて、ここでついにツイッターの話だ。ツイッターはその売りの「ゆるさ」からローカル(mixi的)とグローバル(2ch的)の境界をあいまいなまま扱っているコミュニティという事になるだろう。匿名性の度合いから考えても、ツイッターがコピペに寛容であるべきかは、mixi2chの中間の立ち位置になるはずだ。ということは、どっちも有り得ると考えられる。


ここまでが、このTogetterがまとめられた目的についての説明だ。ポイントをまとめると以下のようになる。

  1. Webで引用元を示した方がいいのは当たり前
  2. でも引用元を示さない文化にみんな慣れていたし、そこにメリットもあった
  3. twitterではどうするべきか、考えておこうか

この中で、特に議論の妨げになったのは、2番目に挙げた事を多くの人が了解していなかったということだ。


また、今回の議論に付いたコメントは、三段階の別の事について言及している。それもまとめておく。

  1. Webでは引用元を示すべきか
  2. twitterでは引用元を示すべきか
  3. twitterで引用元を示すのにはどういう手段を使うべきか

はまちゃん(8/17修正|すいません打ち間違えました)はまちちゃんに確認したわけではないが、今回彼が議論の対象としたのは、2番目についてだと思われる。なぜなら、1と3は簡単な話(あるいは散々既に言われてきた話)なのであまり議論の余地が無いからだ。


この事が分かってないと、議論がややこしくなる。いや実際なってる。例えば「リツイートを使えばいい」という発言では、この三段階のどれに対する言及なのか分からないのだ。こうなってしまう原因は、単に議論がみんなが下手糞だという事だが、そこにはtwitterの文字制限も少し関係している。その事については後で述べる。

twitterはどうあるべきか」という議論が難しいわけ

ここまでの事について、私なりの見解を述べておく。


twitterはローカル(mixi的)とグローバル(2ch的)の境界をあいまいなまま扱っているコミュニティである」と書いた。実際友人ばっかりフォローしている人もいれば、有名人ばっかりフォローしてる人もいるだろう。この多様な使い方が考えられるというところが、今回の話のキーポイントである。


今回明らかになったのは、「twitterはこういうサービスである」という事について、みんなの共通見解がなかったということである。これまで書いてきたように、匿名性の度合いと、コピペが許されるべきかというのは関連がある。そしてtwitter2ch寄りに使ってきた人と、mixi寄り(ちょっと違うけど)に使ってきた人との間で衝突が起きた、ということである。そして議論が始まってコメントを見て分かった事は、多くの人にとってtwitter2chに比べてかなり匿名性の低いものだと思われているということである。

続く

私が書きたいのは、まとめの所にもコメントした別の話なのだが…。長くなりすぎたので一旦切る。

その他の議論

2chのコピペ文化について詳細

2chではコピペは自由と書いた。しかしそこには少しだけルールがあるかもしれない。例えば、「2chで生まれたものは2chの共通財産ではあるが、2chの外に出るには2ch(という良く分からない概念)に承認を取って欲しい」というような。のまネコ騒動とか思い出してみて欲しい。あとは、まとめのコメントにもあるように「2ch外からのコピペ」についても、本来は注意が必要なのだが、そこは割と無頓着かもしれない。


議論できる最低限の文量

以前はてなブックマークについて思った事が今ツイッターでも同じく適用できそうなので確認する。

「論拠の無いものは論ではない」という話をした.そしてはてブのコメントを見ていると,論拠の無いものばかりになっている.しかしこれは文字数の制約上の限界も多分に影響していると思われる.論拠を含めて言いたい事を書くには,ブコメは狭すぎる.だから論ですらないものが横行している.もっとも,書き手が「論になってない」と認識できるならば,ブコメに書くのをやめて自分のブログに書くなりコメントに書くなりすべきなのだが,そういう認識も足らない.




その2へ続く

*1:ハッシュタグを使ったらどうかという意見もあるが、私もそれで「も」いいと思う

*2:場合によっては、悪い意味でも