犯罪者は申し訳なさそうに生きるべきか

まず、この映画は傑作と名高いので見てみたいと思ってるけど見てない。

私が「気持ち悪い」と思った最大の理由は、作品に出てくる囚人の扱いである。囚人たちの扱いがやけにウェットというか、甘々なのが気になった。彼らは長期刑を食らっている凶悪犯罪者で、恐らくは殺人やそれに近い許されざる犯罪を起こして収監されている人々だ。彼らの起こした犯罪に踏み潰され、今なお人生が破壊され戻らない遺族だってきっといるだろう。

この映画の不思議なところは、刑務所を舞台にしながら、そういった部分が全く描かれていないところにある。収監されている人物たちの多くは、なんで投獄されているのかもよく判らないし、そもそも贖罪意識を持っているのかも不明だ。それどころか、この映画における囚人たちは、己の所業のせいで刑に服しているにもかかわらず、まるで生まれ持って不当に差別され虐げられている集団であるかのように描かれている。この部分に強い違和感を覚えてしまう。

抑圧されている日常からの一時的な解放、それを美しくかけがえがないこととしてこの映画は描くのだけれど、そもそもの抑圧の原因は彼らが犯した凶悪な犯罪なのである。犯罪者は常に頭をたれて生きろ……とは言わないが、抑圧の原因を有耶無耶にして、そこからの解放のみを賛美的に描くというのはなんだかバランスが悪い。

この人が結局言いたい事は、「犯罪者は常に頭をたれて生きろ」って事なんじゃないのかなあ。


私はふみさんのコメントの、

たしかに受刑者は「社会的弱者」であるけれども、それは彼らを受刑者にさせた要因ゆえではなく、どこまでいっても受刑者であることそれ自体によって「社会的弱者」なのである。

という見解に同意。